全体構成
各フェーズで「何を検証し、どんな証拠がそろえば次へ進めるか」を判定するフローチャートにまとめました。読みやすいように、全体を3つに分けています。
事業アイデアの創出 → 顧客・課題の検証:G0 IDEATION・G1 CPF
この区間では、まずG0 IDEATIONで「検証する価値のある仮説」を立て、G1 CPFで「想定した課題に本当に困っているか」を確かめます。
- G0:共通する課題が見つからない → 探索領域を変える。
- G0:仮説が広すぎる → 仮説の絞り込みへ戻る。
- G1:課題が確認できない → G0の仮説の絞り込みへ戻る。
次のフェーズに進むための判定基準
| ゲート | 次へ進むためのExitクライテリア | 必要な証拠 |
|---|---|---|
| G0 IDEATION | 探索領域の潜在顧客への複数の探索型インタビュー記録があり、実際の経験・不満・回避策が残っている。発言から抽出した課題候補と顧客像がある(発言と解釈を区別している)。市場に十分な機会がありそうか、既存の解決策に満たされていない余地があるかを初期評価している。顧客・課題・解決策の初期仮説が1つに絞られ、G1で検証する対象顧客と確かめる点が決まっている | 探索領域メモ、インタビュー記録、インサイト整理、アイデア候補一覧、初期仮説 |
| G1 CPF | G0の仮説に合致する顧客層で、課題が繰り返し確認できる。課題の存在と深刻度(頻度・損失・切迫度)を裏付ける証拠があり、困っていない顧客・反例との差を説明できる。解決が他の課題より優先される理由がある | 直近の体験談、業務観察、現在の支出・工数、既存の回避策、反例の記録 |
G0 と G1 のインタビューの違い
| 項目 | G0 IDEATION | G1 CPF |
|---|---|---|
| 目的 | 事業アイデアを創出し、顧客・課題の仮説を立てる | 顧客に本当にその課題があるか検証する |
| 問い | 検証する価値のある仮説が明確か? | 想定した課題に本当に困っているか? |
| アプローチ | 探索型インタビュー。仮説やアイデアを先に話さず、幅広い潜在顧客の経験を聞く | 仮説検証型インタビュー。G0の仮説に沿って、直近の事実で確かめる |
| 対象者 | 幅広い潜在顧客(探索領域にいる人) | 仮説に合致する対象顧客 |
| 成果物 | 課題候補、顧客像、事業アイデア、顧客・課題・解決策の初期仮説 | 検証済みの課題仮説、顧客セグメント |
| Exitの基準 | 検証する価値のある仮説が明確 | 課題の存在・深刻度を裏付ける証拠がある |
G0のインタビューは、アイデアを売り込む場ではありません。 仮説やアイデアを先に話さず、潜在顧客の直近の経験・不満・今の回避策を聞きます。市場と勝ち筋の評価は概算の初期評価に留め、精緻な算定や競争戦略の確立は後のゲートで行います。
「あったら便利」という賛同だけではCPF通過にしません。 顧客が実際に困った場面と、そのために払っている時間・費用まで確認します。
解決策の検証 → 製品としての検証:PSF・SPFまで
この区間では、「解決策に価値があるか」と「実際の製品で価値を届けられるか」を分けて判定します。
- G2:課題の優先度が低い → ① CPFへ戻る。
次のフェーズに進むための判定基準
| ゲート | 次へ進むためのExitクライテリア | 必要な証拠 |
|---|---|---|
| G2:PSF | 既存の代替手段に対する改善が確認できる。導入の障害が分かっている。顧客が検証参加・データ提供・有償試行などの具体的行動を取る | 比較実験、改善結果、価格提示への反応、試行合意 |
| G3:SPF | 想定顧客が中核業務を完了できる。期待した成果が出る。想定する支援量で提供できる。重大な技術・運用上の障害が解消している | 利用ログ、タスク完了率、成果の前後比較、支援工数、障害記録 |
PSFでは人力を含む試験でも価値を確かめられます。SPFでは、提供する製品と運用の組み合わせで、その価値を再現できることを確認します。
例えば、担当者が毎回数時間付き添って初めて使える場合、その支援が想定するサービス条件と採算に収まるかまで判定します。
市場適合 → 事業成立 → 拡大:PMF以降
この区間では、「使い続けられる」「採算が成立する」「拡大しても成立する」を順に確認します。採算や販売の仮説検証自体は、前段階から並行して進めます。
- G4:初回価値に届かない → ② SPFへ戻る。
- G4:価値が弱く継続しない → ① CPF・② PSFを再検証。
- G6:No → 悪化した工程・容量制約を改善し、限定した範囲で拡大実験をやり直す。
次のフェーズに進むための判定基準
| ゲート | 次へ進むためのExitクライテリア | 必要な証拠 |
|---|---|---|
| G4:PMF | 狙う顧客層で価値獲得・継続・支払いが確認できる。複数の顧客群で傾向が再現する。離脱理由を説明できる | コホート別継続率、更新実績、成果指標、解約理由、支払実績 |
| G5:事業成立 | 再現可能な獲得経路がある。獲得費と提供費を含めて採算が成立する、または成立までの改善仮説に実証的な根拠がある。必要資金を確保できる | チャネル別獲得費、粗利・貢献利益、回収期間、販売期間、資金繰り |
| G6:拡大 | 顧客数や販売量を増やしても、獲得効率・継続率・提供品質が許容範囲を保つ。人員・システム・運用を増強できる | 拡大実験の実績、処理能力、顧客当たり支援工数、品質指標、資金需要 |
ここでいう「事業成立」「拡大」は、Business Model Fit・Scale Fitに相当する実務上のゲートとして置いています。
Exitクライテリアを実際に運用するためのルール
各ゲートでは、検証を始める前に次の6項目を決めます。 数値は事業ごとに設定し、結果を見てから合格ラインを変更しないことが大切です。
| 項目 | 設定例:B2B SaaSのSPF検証 |
|---|---|
| 対象 | 特定業種の担当者。開発チームと関係の薄い顧客も含む |
| 成功行動・成果 | 初期設定から主要業務まで完了し、処理時間が短縮する |
| 合格水準 | 例:対象10社中8社が完了、処理時間の中央値が30%以上短縮 |
| 観測期間・条件 | 例:4週間、導入支援は1社当たり2時間以内 |
| 証拠 | 操作ログ、実測した作業時間、問い合わせ・支援記録 |
| 未達時の判断 | 操作の問題はSPFを改善。成果が出ない場合はPSFを再検証 |
※上記の数値は設定方法を示す例であり、一般的な合格基準ではありません。継続率も、日常利用のSaaSと季節利用の予約サービスでは観測期間・定義を変える必要があります。
ゲートの結論は4つに分ける
ゲートの結論は、次の4つにすると判断が明確になります。
必要な証拠がそろい、次の検証へ進む。
証拠が不足しているため、対象・期間・方法を補って再検証する。
仮説が否定されたため、顧客・課題・解決策などを変える。
合意した検証予算・期間内では、継続する根拠を得られない。