参考資料と全体構成
各フェーズで「何を検証し、どんな証拠がそろえば次へ進めるか」を判定するフローチャートにまとめました。読みやすいように、全体を3つに分けています。
参考になる公開資料は、次の2つが見つかりました。ご記憶のプロダクトがこれかは断定できませんが、製品サイトとしてはOpsdataが近い候補です。
| 参考資料 | 公開されている内容 | 今回参考にした点 |
|---|---|---|
| Opsdata:フィットジャーニー支援システム ↗ | CPF→PSF→SPF→PMFのフェーズ図 | 顧客課題から市場適合へ進む基本構造 |
| 東京大学FoundX:スタートアップ・フィット・ジャーニー Version 2 ↗ | 市場選定・戦略・初期顧客の選定を含む体系 | 開発に入る前の検証と、前段階へ戻る考え方 |
Opsdataは4段階の構成、FoundXのVersion 2は市場・戦略からPMFまでを扱っています。FoundXも、実際には段階を行き来すると説明しています。[出典1・2]
以下は、その構造を参考にした独自の実務用チャートです。Exitクライテリアと、PMF後の事業性・拡大のゲートは今回の提案であり、参考資料の公式認定基準ではありません。
機会探索 → 顧客・課題の検証:CPFまで
この区間では、「誰の、どの課題を解く事業なのか」を確かめます。
次のフェーズに進むための判定基準
| ゲート | 次へ進むためのExitクライテリア | 必要な証拠 |
|---|---|---|
| G0:機会・戦略 | 顧客候補に接触できる。狙う市場に事業としての広がりがある。なぜ今、自社が取り組むかを説明できる | 市場仮説、競合・代替比較、顧客候補、検証計画 |
| G1:CPF | 同じ顧客層で課題が繰り返し確認できる。頻度・損失・切迫度が把握できる。解決が他の課題より優先される理由がある | 直近の体験談、業務観察、現在の支出・工数、既存の回避策 |
「あったら便利」という賛同だけではCPF通過にしません。 顧客が実際に困った場面と、そのために払っている時間・費用まで確認します。
解決策の検証 → 製品としての検証:PSF・SPFまで
この区間では、「解決策に価値があるか」と「実際の製品で価値を届けられるか」を分けて判定します。
- G2:課題の優先度が低い → ① CPFへ戻る。
次のフェーズに進むための判定基準
| ゲート | 次へ進むためのExitクライテリア | 必要な証拠 |
|---|---|---|
| G2:PSF | 既存の代替手段に対する改善が確認できる。導入の障害が分かっている。顧客が検証参加・データ提供・有償試行などの具体的行動を取る | 比較実験、改善結果、価格提示への反応、試行合意 |
| G3:SPF | 想定顧客が中核業務を完了できる。期待した成果が出る。想定する支援量で提供できる。重大な技術・運用上の障害が解消している | 利用ログ、タスク完了率、成果の前後比較、支援工数、障害記録 |
PSFでは人力を含む試験でも価値を確かめられます。SPFでは、提供する製品と運用の組み合わせで、その価値を再現できることを確認します。
例えば、担当者が毎回数時間付き添って初めて使える場合、その支援が想定するサービス条件と採算に収まるかまで判定します。
市場適合 → 事業成立 → 拡大:PMF以降
この区間では、「使い続けられる」「採算が成立する」「拡大しても成立する」を順に確認します。採算や販売の仮説検証自体は、前段階から並行して進めます。
- G4:初回価値に届かない → ② SPFへ戻る。
- G4:価値が弱く継続しない → ① CPF・② PSFを再検証。
- G6:No → 悪化した工程・容量制約を改善し、限定した範囲で拡大実験をやり直す。
次のフェーズに進むための判定基準
| ゲート | 次へ進むためのExitクライテリア | 必要な証拠 |
|---|---|---|
| G4:PMF | 狙う顧客層で価値獲得・継続・支払いが確認できる。複数の顧客群で傾向が再現する。離脱理由を説明できる | コホート別継続率、更新実績、成果指標、解約理由、支払実績 |
| G5:事業成立 | 再現可能な獲得経路がある。獲得費と提供費を含めて採算が成立する、または成立までの改善仮説に実証的な根拠がある。必要資金を確保できる | チャネル別獲得費、粗利・貢献利益、回収期間、販売期間、資金繰り |
| G6:拡大 | 顧客数や販売量を増やしても、獲得効率・継続率・提供品質が許容範囲を保つ。人員・システム・運用を増強できる | 拡大実験の実績、処理能力、顧客当たり支援工数、品質指標、資金需要 |
ここでいう「事業成立」「拡大」は、Business Model Fit・Scale Fitに相当する実務上のゲートとして置いています。
Exitクライテリアを実際に運用するためのルール
各ゲートでは、検証を始める前に次の6項目を決めます。 数値は事業ごとに設定し、結果を見てから合格ラインを変更しないことが大切です。
| 項目 | 設定例:B2B SaaSのSPF検証 |
|---|---|
| 対象 | 特定業種の担当者。開発チームと関係の薄い顧客も含む |
| 成功行動・成果 | 初期設定から主要業務まで完了し、処理時間が短縮する |
| 合格水準 | 例:対象10社中8社が完了、処理時間の中央値が30%以上短縮 |
| 観測期間・条件 | 例:4週間、導入支援は1社当たり2時間以内 |
| 証拠 | 操作ログ、実測した作業時間、問い合わせ・支援記録 |
| 未達時の判断 | 操作の問題はSPFを改善。成果が出ない場合はPSFを再検証 |
※上記の数値は設定方法を示す例であり、一般的な合格基準ではありません。継続率も、日常利用のSaaSと季節利用の予約サービスでは観測期間・定義を変える必要があります。
ゲートの結論は4つに分ける
ゲートの結論は、次の4つにすると判断が明確になります。
必要な証拠がそろい、次の検証へ進む。
証拠が不足しているため、対象・期間・方法を補って再検証する。
仮説が否定されたため、顧客・課題・解決策などを変える。
合意した検証予算・期間内では、継続する根拠を得られない。
出典・参照リンク
- Opsdata|フィットジャーニー支援システム
CPF・PSF・SPF・PMFの基本構造を参照。 - 東京大学FoundX|スタートアップ・フィット・ジャーニー Version 2
市場選定・戦略・初期顧客選定からPMFまでの構成と、段階を行き来する考え方を参照。 - 関連スライド:スタートアップ・フィット・ジャーニー Version 2.1/馬田隆明
参照確認日:2026年10月22日。図は公開資料の構造を参考に新たに構成したもので、判定基準・差し戻し・PMF後のゲートは本ガイドの実務用提案です。